ハイペリオンの憂鬱

競馬や映画や小説について書こうと思います

ケン・リュウ 『母の記憶に』(ハヤカワ新SFシリーズ)

第一短編集の『紙の動物園』、長編『蒲公英王朝記』のケン・リュウの日本での第二短編集。

読んでいて思ったのは母親にまつわる物語が多いこと。おそらくそういった意図があってセレクトされた作品もいくつかあるんだろうな、と読んでいて思った。

個人的に好きなのはオルタネート・ワールド物の「烏蘇里羆」「『輸送年報』より「長距離貨物輸送飛行船」」。

ケン・リュウのオルタネート・ワールド物を読んでいると思い浮かぶのは競馬の血統でアウトブリードと呼ばれる配合のこと。

アウトブリードとは五代血統表内に同じ血を有する馬が一頭もいない馬の配合のことを指す言葉で、有名な馬だとディープインパクトスペシャルウィークがアウトブリードである。

ちなみに五代血統表に同じ血を有する馬がいることはインブリードという。要は近親交配のことで、同じ血を持つ馬同士で遺伝力を高めようとするために行われる。

アウトブリードを連想するのはケン・リュウの持つSF的な想像力とアミニズム的な世界観が上手くミックスされたビジョンから世界が広がっていくような力強い感覚を覚えるからだ。

中国とアメリカの異系交配によって生まれた怪物。ケン・リュウはおそらくそんな作家なんだろう。今表面に現れている作品群はその氷山の一角にすぎない気がする。

 

ケン・リュウのオルタネート・ワールド物の長編が出ると、それはSFの歴史を刷新するかもしれない。

エンダーのゲームやアルジャーノンに花束をも元は短編だったわけだし。